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あの日――あの嵐のような日の夜、鈴へ電話をした。
何を話せばいいのかわからなかったけど、とにかく、傷付けたことを謝りたかった。
だけど、鈴はオレにそれを許さなかった。
『謝らないでね』
先手を打つように、鈴が言った。
『透から謝られると、わたしが惨めな気になる。透が謝るたび、わたしが透の負担になってるんじゃないかって不安になる』
頭をガツンと殴られたような気がした。
違う。鈴の言っていることは、逆だ。
鈴がオレの負担になっているんじゃない。
鈴にそう思わせているオレの方こそが、鈴の負担になっているんだ。
鈴にとって、今のオレは負担でしかないんだ……。
電話を持つ手が震えた。
「オレたち……すこし、時間置こうか」
やっとのことでそう言葉を絞り出した。
声が震えなかったのが奇跡だ。
「わかった」
鈴は一言そう答えただけだった。
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