第3話 吹き荒れる風

25/33
前へ
/155ページ
次へ
 あの日――あの嵐のような日の夜、鈴へ電話をした。  何を話せばいいのかわからなかったけど、とにかく、傷付けたことを謝りたかった。  だけど、鈴はオレにそれを許さなかった。 『謝らないでね』  先手を打つように、鈴が言った。 『透から謝られると、わたしが惨めな気になる。透が謝るたび、わたしが透の負担になってるんじゃないかって不安になる』  頭をガツンと殴られたような気がした。  違う。鈴の言っていることは、逆だ。  鈴がオレの負担になっているんじゃない。  鈴にそう思わせているオレの方こそが、鈴の負担になっているんだ。    鈴にとって、今のオレは負担でしかないんだ……。    電話を持つ手が震えた。   「オレたち……すこし、時間置こうか」  やっとのことでそう言葉を絞り出した。  声が震えなかったのが奇跡だ。 「わかった」  鈴は一言そう答えただけだった。
/155ページ

最初のコメントを投稿しよう!

29人が本棚に入れています
本棚に追加