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――時間を置こう、と言ったのは自分だ。
だけど、どれくらいの時間を置けばいいのだろうか。
時間が経てば経つほどに、何も見えなくなっていくようだった。
鈴の気持ちも、自分の気持ちさえもが霞んで見えなくなっていく。
反対に、足は目覚ましい回復ぶりを見せていく。
装具にもすっかりなじみ、松葉杖は片方のみ用心のために使うけど、それが無くても歩くことができるようになった。
たぶん、鈴もそれには気付いているはずだ。だけど、順調な回復ぶりを今は一緒に喜んではくれない。
「遠い、なぁ……」
いつも一緒にいたはずの彼女が、遠くへ行ってしまったような気がした。
中学生の頃、自分の存在さえ知ってもらえていなかった頃よりも、ずっと遠くに鈴がいる気がする。
自分一人がただポツリと取り残されて、鈴はどんどん先を行く。
……どこで間違ったのだろう。
何を間違ったんだろう。
どうしたら、また彼女に追い付いて、隣を走ることができるかな。
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