第3話 吹き荒れる風

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「透?」  不意な呼びかけに、物思いから引き戻された。 「おー、慎吾。何?」  慎吾は教室のドアのところに立ったままで、中には入らず声をかけてきた。 「いや別に。通りかかったら見えたから。帰んないの?」 「んー、帰るよー、もう少ししたらね」  答えて再び外に目を向ける。慎吾は「そうか」とだけ答えて、そのまま立ち去ったようだった。  つい苦笑した。  こんな時、そっとしていてくれるのは慎吾の優しさだ。    オレが今、心から笑えないことをあいつは知っている。  だから、一人にしてくれる。  慎吾には全ての事情を話したわけじゃない。それでもわかってしまうのが親友なのかもしれない。    改めて鈴に思いを馳せた。  彼女は今、どんなふうにオレのことを思っているのだろう。  自分の気持ちもろくに見えない今、それを想像することはひどく困難だった。
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