第3話 吹き荒れる風

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     *    *    *  歩こう、と思ったのは、ほんの思いつきだった。  気分転換にもなるし、リハビリにもなる。  学校前のバス停から自宅最寄りのバス停まで、たったの4つ。時間にすれば10分程。徒歩でも30分はかからない道のりだ。  まあ、これは通常の歩行ができる場合の話だけど、今でも時間かければいけなくはないだろう。    ――とか思った二十分前の自分を殴りたい。  半分ほどの道のりを歩いて来たところで、オレはすでに後悔し始めていた。  時は真夏。日は西に傾いている時間とはいえ、まだじりじりと焦げ付くように熱い。   さらに、装具をつけた足が、暑さを2倍にも3倍にも感じさせた。  「あっつ……」  汗をぬぐいつつ、横の金網に手をついて立ち止る。  死ぬほど暑い上に、足も松葉杖をつく腕も鉛のように重い。    こんな無茶をして、また切れたらどうするつもりだよ。   「そん時はそん時……なんてね」   冷めきったような、諦めの境地になった自分を笑いたくなった。  滅茶苦茶だ、と思う。こんなことで自棄になったって仕方ないのに。
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