第3話 吹き荒れる風

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  「バカだろ、オレ」  バンバンッ、という小気味いい音が耳に届いたのは、そう俯いた時だった。 「?!」  反射的に顔を上げた。  その音は一定のリズムで聞こえてくる。ボールをつく音だ、とすぐに気付いた。   「バスケ……?」  体勢を整えて、金網伝いに足を進めた。  その音のする方はちょうど進行方向だったし、ちょっと見てみようと思ったのだ。    すぐに音の正体は目に飛び込んできた。  今まで伝って来た金網の向こうは公園になっていて、そこに小さなバスケットコートがあった。  そこで男が一人、バスケットボールの練習に励んでいた。さっき立っていた場所からは視界が植え込みに遮られていて、見えなかっただけのようだ。  そういえば、公園あったな、とぼんやりと思う。  いつもは自転車で、最近はバスで通りすぎていくだけの道、これまで特に関心を向けることなんてなかった。
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