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ボールは、オレのちょうど前で金網にぶつかり止まった。
その人が真っ直ぐオレの方へ近付いてくる。顔には人の良さそうな笑みを浮かべたままだ。おかげで、オレはますますそこを動けなくなってしまった。
改めてその人を見た。
髪は金髪に近いくらいの薄い茶色で、緩くパーマを当てているようにフワリとしている。耳にピアスか何かしてあるようで、西日を受けてキラリと輝いた。
白いTシャツにカーキ色のハーフパンツというラフな格好だけど、どこか華やかな印象――つまり、外見は結構派手め。
だけど、その顔に浮かぶ温和な笑みのせいで、雰囲気は柔らかく感じた。
オレより少し年上、だろうか。
「あの……すみません、黙って見ていて」
声を掛けると、ボールを取るためにしゃがんでいた彼が顔を上げた。
その顔はさっきまでと変わらない笑顔だ。返事はなかったけど、別に怒っている訳ではなさそうだ。ホッとしてもう一度声を掛けた。
「綺麗ですね、プレイ」
正直な感想を述べる。その人はきょとんとしていたけど、一瞬遅れて照れ臭そうに破顔した。
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