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オレを公園の中に招き入れた男は、かといってその後もオレに構うでもなく、一人でマイペースに練習を続けた。
オレは傍らに座り、ボーっとそれを眺めるしかない。
本当に、ただ見ているだけ。
でも、退屈を感じることはなかった。
それどころか不思議なほどに惹きつけられる。
彼の無駄のない動きは綺麗で躍動感に溢れていて、見ているだけで心拍数が上がりそうな気がした。
わくわくする。
うずうずする、と言い換えてもいい。
足の怪我がなければ、オレも迷わずコートの中に入り、彼と一緒にボールを追ったかもしれない。
そして、地面を蹴って、高く、遠く跳び上がるのだ。
「――!」
ふと、青空が見えた気がして、ハッとした。
長く忘れていたあの感覚――浮遊感。
バーを越すその瞬間に見えた、青。
思わず上を仰いだ。
そこに見えたのは突き抜けるような青色ではなく、西日のオレンジが混じった薄い色。
だけど――空だ。
当たり前のことだ。それでも、今のオレの目には、それは衝撃的なほど新鮮に映って。
「空……」
そこから目を離すことができずにいた。
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