第1話 晴れ渡る空

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「うわ、ごめん、なんか一人で盛り上がってるね、オレ」 『ううん、そんなことないよ。わたしも嬉しいもん。本当におめでとう。でもわたし、透なら絶対にやると思ってたけど』 「うん、オレも絶対やれると思ってた」  二人でクスクス笑い合う。 『本当に、優勝もできるかもね』  そんな鈴の言葉に、オレは不敵に笑う。 「かも、じゃなくて、優勝するんだよ。地区大会優勝して、全国大会に行って……うん、そこからの予定はまだ未定だけど」 『あれ? 全国でも優勝じゃないの?』  さらりと大胆な事を鈴は口にする。さすがに苦笑するしかないけど、彼女が言うと、それすらも実現したくなるから不思議だ。 「やっぱ目指すはそれかなぁ」  もともと、オレにはあまりそういう欲がない。  過去も、大会でそこそこ良い記録を残してはいるけど、それを目標にがむしゃらになってきたわけではなかった。自分が楽しんでやっている競技(こと)に、結果がたまたま付いてきただけのことだ。  でも、今回は違う。鈴が喜んでくれるなら、はっきりと目標を持って結果を残したいと思ったりする。  そして、それだけではなかった。今度の大会には、今後の進路もかかっていた。結果次第では、陸上競技名門の大学への推薦も受けられるかもしれない。  それでも、やはりまず先に考えるのは鈴のことで、大学の推薦についてはおまけのような感覚だった。  そんな自分を自覚し、つくづく馬鹿だなぁと思う。優先順位違うだろう、オレ。
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