第4話 流れる雲

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「アキレス腱、切っちゃって」  狩野さんは、自分が痛そうに顔を顰めた。そしてまたサラリとボードに書く。 『なんかスポーツやってたの? ガッコーのブカツ?』  頷いた。 「陸上やってました。走り高跳び」  はっきり話そうと思うと、自然と身ぶり手ぶりが大きくなる。そのせいもあるのか、すんなりと通じているようだ。狩野さんの目が大げさとも言えるくらい丸くなった。 『かっこいーね!』  その文字に苦笑する。 「別にかっこよくもないですけど」  狩野さんはそれにも面白そうにクスクスと笑ったけど、突然、ハッとしたような顔をして、またペンを走らせた。 『だからか』 「え……?」  だから?  首を傾げていると、狩野さんは持っていたペンを上を指すように上げた。 「そら」  そう短く声に出す。その後は文字にしてオレに見せた。 『とびたいってカオしてた』  オレは瞬きをして、二度三度とその文字を読み直した。  ――跳びたいって顔してた? 「……オレが?」
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