29人が本棚に入れています
本棚に追加
だけど、おかしな関係だなとはつくづく思う。
お互いのことほとんど何も知らないのに、こうやってわざわざ練習を見に来たり、世間話をしたりするなんて。
しかも、知り合ってからまだそんなに経たないのに、そういった気負いや遠慮も、もう全くない。一緒にいるのは楽だった。
おかげで、いつの間にか敬語を使うこともしなくなった。
あまりにも自然に接することができるから、もう随分前からの知り合いのように錯覚してしまいそうになる。
「涼介さんって、誰にでもこんな感じ?」
ついそんなことを聞いてしまったオレに、涼介さんは微妙な表情を見せた。
『どんなカンジ?』
「えーっと、なれなれ……人懐っこい感じ?」
馴れ馴れしい、と言いかけて咄嗟に言い換える。が、すぐにゴンっと軽い拳骨が落ちてきた。
『なれなれしいだ?』
「言ってない言ってない!」
笑って否定するオレを睨みつけ、涼介さんはわざとらしいくらいの大きなため息をつき、サッと文字に起こす。
『どっちかというと人みしり』
「えー?」
『フツーの人に声かけるの、けっこーゆーきいるし』
「普通の人……」
何気ないその文字に、思わぬショックを受けた。
聞こえる人のことをそう言うんだったら、涼介さんは自分のことを普通じゃないって言ってるみたいだ……。
最初のコメントを投稿しよう!