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改めて、涼介さんのハンデのことを考えた。
極めて音の少ない世界――それを自分の身に置き換えて考えようとしても、すぐには理解できない。こんなふうかな、と想像することはできても、それは「理解する」とは言わないだろう。
だから、涼介さんがどういうつもりで「フツーの人」と表現したのか、オレには理解できない。
でも、それでも、涼介さんが「フツーの人――聞こえる人」に声を掛けることが勇気が要ることだというのは、なんとなく理解できた。
「じゃあ、どうしてオレには声かけたの?」
涼介さんは少し考え込むそぶりを見せ、文字を書いた。
『とーるがあまりにもイタそうなカオしてたから』
見せられた文字に絶句した。涼介さんは更に続ける。
『泣きそうにみえた』
「な、泣きそうって……」
オレは返す言葉を見つけることが出来なかった。ただ戸惑うばかりだ。
オレには痛そうな顔した覚えも、泣きそうになった覚えもない。
涼介さんはしばらく手を止めて何かを考えているふうだったけど、一人納得したように小さく頷いて、サラサラとペンを走らせた。いつになく時間がかかっている。一分以上かかって、ようやくそれをオレに示した。
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