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無理してない? と何度も聞いてきた鈴の気持ちが、少しだけ見えた気がした。
無理していないと顔では笑いながら、オレの心はたぶん、少しも笑っていなかった。だから鈴は、あんなに気にしてくれていたんだ。
全身の力が抜けた。ガシャンと音を立てて金網に寄りかかり、空を仰ぐ。隣で涼介さんも同じようにした。
「……そら」
ややあって、涼介さんが口を開いた。
珍しく声を出した涼介さんに、思わず彼を振り向いた。涼介さんは空に目を向けたまま、慎重に続ける。
「そらを、見る、とーるの目は、いきいき、してるよ」
オレも再び空を見上げた。
生き生きしてる――か。
涼介さんが言うのなら、きっとそうなのだろう。
それほど、オレは空に、跳ぶことに焦がれている。
初めてそれを認められる気がした。
頑なだった心が解れていく。
蟠っていたすべてを吐き出すような、長いため息がもれた。
「――涼介さん、聞いて。オレ、大好きなコがいるんだ」
そして、独り言のように言った。
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