第4話 流れる雲

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 無理してない? と何度も聞いてきた鈴の気持ちが、少しだけ見えた気がした。  無理していないと顔では笑いながら、オレの心はたぶん、少しも笑っていなかった。だから鈴は、あんなに気にしてくれていたんだ。  全身の力が抜けた。ガシャンと音を立てて金網に寄りかかり、空を仰ぐ。隣で涼介さんも同じようにした。 「……そら」  ややあって、涼介さんが口を開いた。  珍しく声を出した涼介さんに、思わず彼を振り向いた。涼介さんは空に目を向けたまま、慎重に続ける。 「そらを、見る、とーるの目は、いきいき、してるよ」  オレも再び空を見上げた。  生き生きしてる――か。  涼介さんが言うのなら、きっとそうなのだろう。  それほど、オレは空に、跳ぶことに焦がれている。  初めてそれを認められる気がした。  頑なだった心が解れていく。  蟠っていたすべてを吐き出すような、長いため息がもれた。 「――涼介さん、聞いて。オレ、大好きなコがいるんだ」  そして、独り言のように言った。
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