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呟いたオレの顔を、涼介さんは首を深く傾げながら覗きこむようにする。
きょとんとしたその顔を見て、オレはつい苦笑した。つい当たり前のように会話をしていたけど、涼介さんはオレの口元が見えないと、話していることがちゃんと通じない。
「オレ、大好きな人がいるんだ」
今度は涼介さんにも伝わるようにはっきり口を動かすと、涼介さんは少しだけ目を丸くして微笑んだ。
先を促すようなその笑みに、後押しをされるように話を続けた。
「ずっと片思いしてて、やっと付き合えるようになって……自分でも呆れるくらい大好きなんだ。それなのに……傷付けてしまって……もうずっとまともに話もしていない。怒ってるとか、怒られてるとか……謝ればいいとか、そういうことじゃないんだ。でも、このままじゃ……たぶん、ダメになる。どうすればいいかわからないまま夏休みに入るし、会いたくても会えないままで……どうしようもなくて、今はただ、途方に暮れてる」
つっかえつっかえの独白を終えて、ガクリと項垂れた。
夏休みが始まって二週間近く過ぎた。その間、一度も鈴とは連絡を取り合っていない。
会いたい、声が聞きたい。そう思っても、それを実行に移す勇気は出なかった。
謝らないでね――そう言った鈴に、では何を言えばいいのか……まだその答えは見つかってはいないのだ。
拒否されるのは怖かった。自分がこれ以上鈴に負担に思われるのは耐えられない。
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