第4話 流れる雲

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「鈴――彼女とのこともそうだ。さっきオレ、どうすればいいかわからない、途方に暮れてるって言ったけど、そうじゃなくて……」  言葉にすることで自分の気持ちが少しずつ見えてくる。  目の前の霧が晴れていくようだ。 「途方に暮れてた、っていう以前に、オレは考えるのを止めてたんだ。考えたらどうしようもなく苦しかったから、考えることから逃げて――あ」  自分の言葉にハッとした。 「そっか……オレ、ずっとどうしてここに来るんだろうって不思議だったんだけど、逃げてたんだ……」  涼介さんのバスケは、不思議なほどに惹きつけられた。  涼介さんを見ている間はほかのことを考えなかった。  上を見れば空があって、かつての空気を感じることができた。  ここに来れば、自分が輝いていられた時を思い出すことができた。  跳びたい、って素直に感じることができたんだ。  鈴との間に、何の問題もなかった頃のような自分でいることができた。  それは現実からの逃避だ。  つまり、そのためにオレは涼介さんの存在を利用していたということだ。  それに気付いて、思わず項垂れてしまった。 「……ごめん、涼介さん。オレは逃げるためにここに来てたんだ」  俯いてしまったら涼介さんには言葉が伝わらない。そうはわかっていても、顔を上げられなかった。  涼介さんに申し訳ないと思うのもあるし、自分があまりにも情けなかったから。
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