第4話 流れる雲

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 涼介さんはオレの反応を確かめないまま、ボールを手にとって立ち上がった。ゆっくりとボールをつきながらコートの中に向かい、フリースローラインに立つ。  オレはその姿を目で追った。  フワリとした涼介さんの明るい色の髪が夕日に染まり、それが風になびいて燃えているように見える。  涼介さんがボールを構えた。そして、軽く放るようにシュートを放つ。ボールはまるで吸い込まれるかのようにゴールネットに入った。  涼介さんがオレの視線を捉えて笑う。オレはその笑顔に目を細めた。  他人を「強い、弱い」という目で推し量ったことはない。それでも、涼介さんのことは強い、と感じた。  それはたぶん、自分の弱さを知っている強さなんだ。  ――オレもそんなふうになれるのだろうか。  立ち上がり、今まで涼介さんが立っていたフリースローラインに向けて足を踏み出した。  杖を使わずにゆっくりと歩くオレを、涼介さんは微笑んで見守ってくれている。 「涼介さん、パス!」  涼介さんに向って叫んだ。その声が聞こえたかのように返ってくる「おっけー」という返事。直後、オレの手の中に、寸分狂わずボールが落ちてくる。  オレは感触をたしかめるかのようにボールを何度かバウンドさせると、ゴールを見据え、狙いを見定めた。  このシュートが入ったら、何かが変わる気がする――根拠のないそんな思いに、苦笑が浮かぶ。  片足に負担がかからないように慎重に膝を曲げ、伸び上がるようにボールを放った。
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