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「ただい……ま?」
一歩玄関に足を踏み入れた瞬間、そのままそこで凍りついてしまった。
頭の中を「?」「!」がぐるぐると回っている。
何故かって。
目の前には、子どもの丈ほどの大きさの――くま。
一抱えほどもありそうなまるまるとした「くま」が、黒々とした円らな瞳でオレをまっすぐに見つめているからだ。
「……」
……なんだこれ。
いや、これは「ぬいぐるみ」だ。それぐらいはさすがにわかる。
さすがにわかるけど、玄関に待ち構えるように置かれている意味がまるでわからない。
「お! 帰ってきたな!」
リビングの方から愛が楽しげに現れた。ポカンとしているオレを見やって、ぬいぐるみの頭をポンポンと叩きながら満面の笑顔を浮かべた。
「ねえねえ、これかわいーでしょ。くまのポンさん! あんたを待っててあげたのよ。ホラ、ポンさんにただいまは?」
「えっ、ああ……た、ただいま」
変なテンションの愛に気圧されて、つい律儀に返事を返してしまうオレ。
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