第4話 流れる雲

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「――で、なにこれ?」 「だから、くまのポンさん」 「いや、ポンさんはわかるけど。こんなでかいのどうしたんだよ」  愛はよくぞ聞いてくれたといわんばかりに、両手を腰に当て、フフンと胸を逸らした。 「今日さ、そこの神社の縁日だったじゃん。ちらっと遊んできたんだけどさ、運だめしにくじ引きやったら、なんと特賞当てちゃってねー!」  その景品がこのポンさんだったという。変なところで運を使ってしまった姉に、思わずため息をついてしまった。 「よくこんなでかいの持って帰ってこれたな」 「美雪に手伝ってもらってね。でも、さすがにこれ持ったままぶらつく訳にはいかないから、早々に帰って来たってわけ」  美雪、というのは近所に住む愛と同じ年の幼なじみだ。  オレたちの会話が聞こえたのか、リビングからその美雪ちゃんが顔を出して、ビールの缶を持った手を振ってきた。  どうやら、リビングでは軽い宴会でも開かれていたようである。  そんな美雪ちゃんに笑い返して、愛とポンさんを交互に見やった。 「でも、こんなの取ってきてどうすんのさ。返せばよかったのに」  愛はぬいぐるみを愛でるような、かわいらしい性格ではない。  子どもの頃から人形遊びをするより、男の子と混じってサッカーをするような女の子だったのだ。  今でこそ女性らしい格好もするようになったようだけど、内面は昔とさほど変わっていない。ガキ大将そのままだ。  その愛が、にっこりと笑った。
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