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「コレ、アンタにあげるわ」
「――は?」
愛は更に笑みを広げた。
「アンタへのプレゼントよー、感謝しなさい」
「はぁ? なんで。いらないよ、こんなの」
当然だろ。
オレにもそういう趣味はない。
しかも、こんな大きなぬいぐるみ、部屋に置いても邪魔にしかならない。全力で拒否だ。
なのに、愛は構わずニコニコと笑っている。
「そんなに遠慮することないって。快く受け取りな」
「遠慮なく、いらないって」
「うわあ、ひっど! 人がせっかく好意で……みゆきー、透がひどいーっ!」
その声に、リビングの中から美雪ちゃんが出てくる。愛の頭をよしよしと撫でて、大袈裟に悲しげな顔をしてオレを見やった。
「可哀想に、愛……。透ちゃん、お姉ちゃんをいじめちゃダメじゃない」
顔を覆う愛と、一見清楚な美雪ちゃんの悲しげな顔に、演技とわかっていても、ついぐらりと心が揺らぐ。
「あのなぁ……」
幼い頃からこの二人に逆らって勝てたためしはない。
決して暴力的ではないけど、この二人はオレの弱いところをよく知っている。
もう、本当に厄介なコンビなのだ……。
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