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「あーもう、ハイハイ! わかったよ、もらえばいいんだろ」
これ以上のやり取りが面倒で、頭をガシガシと掻きながら投げやりに言った。
その瞬間、愛と美雪ちゃんは、何事もなかったのようにケロリと顔を上げた。
「あら、そ? 最初から素直になればいいのに。じゃ、これは私たちが部屋にあげてやるわ。その足じゃきついでしょ。ほんっと、優しいお姉さんよね、私」
オレは呆れ半分で大きく息をつく。
「何がお姉さんだよ、ガキじゃんか……」
ふと、さっきまで会っていた涼介さんのことを思い出した。たしか、涼介さんも愛たちと同じ年だった。
その年で、あの落ち着きと包容力。
「すごい差……」
「ん? 今誰かと比べた?」
耳聡く呟きを聞きとった愛が振り返る。慌てて首を振った。
「べつに」
秘密な訳ではなけど、積極的に教えたいとは思わない。
好奇心旺盛な愛のことだ、言えば、「紹介しろ」とか言い出しかねない。
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