20人が本棚に入れています
本棚に追加
リーナは手早く洗濯物を片付けると、夕飯の支度のため、庭先の畑にしゃがみ込んだ。そしてまた空を見上げる。雲ひとつなく、真っ青に透き通っている。
「ソラったら、どうしたのかしらね」
視線を手元に戻し、掘り出したジャガイモの土を、手のひらで撫でるように落としながら呟いた。
最南の街と言われるロランパークから馬車に乗り、二つの山を越え谷を越え、三つ目の山の中腹に向かうこと丸三日。硬いシートとでこぼこ道でへとへとになってようやくここ、ロウデリーバレーに辿り着く。
ここは元々宿泊地として栄えた村の一つだった。
客の全てが坑夫たち。国境沿いに伸びる山々から石炭を掘り起こしていた。しかしリーナの祖父の代に石油の時代に変わり、それ以来多くの採掘場が閉山してしまった。
その頃から村は次々に廃墟となったが、ここロウデリーバレーには未だ三百人ほどがひっそりと生活している。
金を稼ぐ手段がなくなった為、男たちは下山してロランパーク近辺で働くようになった。その収入で買った穀物を村に届けてもらうか、年に数回自分で持って帰るというのが彼らのやり方だった。そのためロウデリーバレーには村長や医者、教師を除けば女子供しかいなかった。
国の中心では急速な発展があっていることも知らない、時代に取り残された村人たち。しかし状況は突然変化した。
最初のコメントを投稿しよう!