20人が本棚に入れています
本棚に追加
ちょうど昼食どきだったのもあり、リーナが声をかけるとソラは喜んで付いてきた。近所の高齢の奥さんの所に荷物を届けた後、ソラはなぜか裏戸からやってきた。
「どこの村も大変だね」
ぐるりと家の中を見回してソラはぼやいた。
「どういうこと?」
対面式のキッチンから顔を覗かせるリーナに彼は笑った。
「ここも鉱山時代の宿場町でしょ。この辺に残ってる集落は全部そうだよ。男はみんなロランパークに出稼ぎに行ってる」
「そうなの」
リーナは溜め息混じりに呟いて背を向けた。
キッチンからすぐに美味しい匂いが漂ってくる。手際よくひっくり返される大きなオムレツ。彩り豊かなサラダを添えて、リーナは料理を運んできた。ほかほかの湯気に食欲が唆られたのか、ソラは唾を飲み込んだ。
「昨日の煮物も味が染みて美味しいと思うわ。どうぞ」
「いただきます!」
もう待ちきれないとばかりに、大きな口で料理を頬張る。すぐに彼は歓声をあげた。
「このオムレツ、すんごく美味い!」
皿からはみ出さんばかりの大きなオムレツだったのに、ソラは一口で三分の一を食べてしまった。気持ちのいい食べっぷりにリーナは目を丸くし、思わず噴き出してしまった。
「カーディン牧場のチーズ入りなの。みんな、野菜なんかと物々交換してるのよ。あの人は昔から牛を飼ってて、街には子供達が働きに行ってるの」
その言葉に感心したように頷いた後、ソラはふと真面目な顔で、前のめりになった。
「その牧場ってどこ?」
「え?」
ぽかんとして見つめてくるリーナに、彼はキラキラ輝く目で言った。
「うまくいけば、リーナのお父さんも村に帰ってこれるかもしれないよ」
最初のコメントを投稿しよう!