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藍じゃなくて
健介に、専攻科へ行きたいと言った。
これから両家の顔合わせ、結納、式場を決めて実際に式を挙げるまでに
丁度いい期間だとも言ったし、
工房に入るのをあきらめるのだから、十分な譲歩だとも言った。
健介は、約束が違うとしか言わなかった。
「そんなお嬢さんのお遊びと俺の仕事を天秤にかけたのか」
「私、真剣に勉強してるの」
「いくら稼げるんだ。僕より稼げるわけじゃないよね、
気分悪いよ。そんなのと比べられてたなんて。」
「比べたりしてない。
あなたが仕事熱心なのと同じくらい、私も真剣なの」
「は?俺の仕事と、お前のお遊び一緒にするなよ。」
「お前って言うのやめて」
レストランを出ると、健介はコートのポケットから
指輪の入ったケースを取り出し、アスファルトにたたきつけた。
蓋が開き、光るものが飛び出してどこかへ消えた。
私達はそれぞれ、反対方向へ歩いた。
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