~クラウス・ロディード・シュバルツの欲しかったもの~

6/6
157人が本棚に入れています
本棚に追加
/63ページ
~クラウス・ロディード・シュバルツの欲しかったもの クラウスside~ 場所は変わり、王城の政務室。 父である国王陛下に城下町からの帰還を報告する。しかし、今回愚生は城を抜け出したことになっているはずである。 「国王陛下、第一王女ノア・ロディード・シュバルツただいま帰城しました。」 「同じく、第二王子クラウス・ロディード・シュバルツ、帰城しました。父上。」 姉に続き、深く頭を下げた。帰城の挨拶を父に済ませ、叱られる覚悟をしたが、父は少し複雑そうな顔で微笑んだ。 「よくぞ帰った。城下町への視察ご苦労であった。」 執務室には、使用人1人と宰相しかいない。この場で、愚生を叱っても見るのはその2名だけである。だから、きっと叱ると考えていたのだが、父はただひたすら複雑そうな表情でこちらを見ていた。 「父上、勝手なことをして申し訳ござ「国王陛下、この度、宰相様と第一騎士団団長により、ご報告があります。クラウス様は大変お疲れのようですので、私がお部屋までお連れしても構わないでしょうか。」 姉は深く頭をさげたまま愚生の言葉を遮り、父上と言葉を交わす。父上は姉の言葉を聞くと今度は眉間にしわを寄せた。 「ノア。もちろんだとも。でもノア。相変わらず、固いな。ノアは私の大切な子供なんだ。もっと、気を楽にしなさい。」 姉は決して頭を上げなかった。姉の表情は見えないが、きっといつものように微笑んでいるのであろう。 「国王陛下、御厚意感謝いたします。以後、考慮いたします。」 姉は、抑揚の薄い声で父に答えると、執務室を後にした。
/63ページ

最初のコメントを投稿しよう!