156人が本棚に入れています
本棚に追加
~ギース・ロディ―ド・シュバルツの嫌いな人 ギースside~
この国の第一王子として生を受けた俺、ギース・ロディ―ド・シュバルツ(7歳)には嫌いな人がいる。そう、姉上の事だ。
姉上は、俺が物心つく頃から周りから優秀だと褒められていた。剣術も馬術も勉強も礼儀作法も完璧にこなす。そんな姉を持つ自分もきっと優勝なのだろうと思っていたが、事実は違った。姉とは年が5つ離れていたが、姉の偉大さを感じるのは年の差で生まれるようなものではなかった。
何度も教師を代えても、何度も教科書を変えても、剣を代えても、馬を代えても、勉学も剣術も乗馬も姉上のように上手くはならなかった。
そんな中、母エフィルダの姉の子ども、つまりは俺の従兄弟にあたるケインを連れ王城にやってきたとき、城を抜け出し城下町で遊んだ。しかし、城下町で俺とケインは悪い大人に捕まり、蔵に閉じ込められた。心細くて泣き出したケインにつられるように泣き出した俺を迎えに来たのは姉の使用人ルーシェと姉上だった。
「ギース様、今すぐに泣き止みなさい。貴方は第一王子なのです。人前で泣くなんて、ケイン様の前で恥ずかしくはないのですか。」
俺は、心配するより先に俺に言った一言でなぜか涙が引っ込んでしまった。ケインはずっと泣いていたが、姉が何かを耳打ちすると泣くのをやめ笑顔になった。
「さあ、帰りますよ。ギース様、ケイン様。」
そして無事に城に帰ると、王妃様と母上と父上が笑顔で迎えてくれた。
「ギース、城下町はどうだった?初のお忍びだったが、ケインもノアもいたから楽しかっただろう?」
父上が城を抜け出したことを怒るのではなく、まるで俺が冒険をしてきたかのように言うのだった。俺はなぜだかわからなかったが、王妃様も母上もまるで何事もないかのように笑顔だった。しかし、姉上の微笑みだけには後ろに般若が見えた。
「ギース様、お話がありますので後ほど東庭園で。」
最初のコメントを投稿しよう!