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~ギース・ロディ―ド・シュバルツの嫌いな人 ギースside~
俺が城下町に抜け出してから数日がった。何故か城から抜け出したのではなく、俺の専属教師から勧められ、城下のお忍び視察にいったということになっていた。
そして現在、その専属教師の授業を受けている。数式の山を見てやる気をなくした。
「城下町は楽しかったな。」とポツリ内に秘めるはずだった言葉が外に出た。その言葉を聞き、専属教師は眉をしかめた。なにを思ったのか、その専属教師は部屋の扉を開け、扉のそばに控える使用人に何かを伝え、その扉を開けたままにして授業を続けた。
どのくらい時間が過ぎただろう。つまらない授業ただ耳を通り過ぎる中で、開きっぱなしのドアから現れたのは濃い青のドレスを身にまとった姉上だった。
「失礼します。先生、少々お時間をいただいてもよろしいですか?」
俺の専属教師は、待っていました!!という表情で姉上のもとに行くと、姉上に何か耳打ちをされていた。その後、専属教師は「かしこまりました。」と伏角姉上にお辞儀すると、俺の元まで戻った。
「ギース王子、座学は終了し、これからノア姫様と私と共に、大学の研究所見学をいたしましょう。本日の大学の研究所案内はノア姫だけでしたが、ギース王子のこれからのお役にもなるでしょう。」
俺に、先生はそういったが、正直俺は城下町で遊びに行きたいのであって、城の外ならどこでもいいわけではなかった。そんなことを提案する先生に向かい苦い顔をすると、姉上が般若の笑みを浮かべ俺を見ていた。その表情を見て、「行く。」と小さく答えた。
「では、ギース様、着替えください。その間私は先生とお話をしていますから。ルーシェ、研究所見学にギース様も行くことになったことを国王陛下に伝えて。あと、道中の護衛の人数を2人ほど増やしてもらいたいから、騎士団に連絡してください。ルーシェ、貴方は今日、城で待機を命じます。」
姉は淡々と周りの者に指示を出し、研究所見学の準備を進めていく。俺はその様子が、これが姉と俺の信頼と実力の差だと言われているようで、唇を強くかんだ。
「姉上なんて大嫌いだ。」弱々しいこの声は誰も聞き取ってはくれなかった。
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