短編 怪(あやし)は人の傍らに 2話

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波切が一際大きく叫ぶと、波切の右手が一気に黒く染まった。 紫穂「...!?」 よく見ると、波切の右手は黒くなったのではなく文字で埋めつくされていた。 その右手で印を結ぶと、ぶわぁっと風が巻き起こった。 離れて見ている紫穂ですら吹き飛ばされそうな勢いだ。 その風の中心に、獣が見えた。 3m程もある大きな、月のような色をした獣。 煌めく銀とクリーム色を混ぜたような色の毛皮と、長い尾と耳。 兎と鼬を掛け合わせたようなその美しい獣は、宙を舞い黒いものを喰った。 がぶり。 獣に黒い塊が飲み込まれるのが見える。 ...とても美しいが、どこか恐ろしかった。 ──────────────────── 波切「...サン、高山サン。終わったよ」 紫穂「はっ...?」 気付くと家の前に立っていた。 紫穂「あれ、私、あれ」 波切「......お姉さん、もう苦しまなくていいんだよ。終わったの」 波切が優しく、そう言う。 紫穂「......お姉ちゃん...」 そうか。終わったんだ。 あの化物は、あの獣は、あの光は 本物だったんだ。 幻なんかじゃない。喰い殺された姉も、あの化物も、全て。 私の見たものだ。感じたものだ。 あの化物はもういない。“あそこには”。 でも確かに存在していた。……何かが。     
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