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紫穂「......そう...ですよね...」
波切「そういう仕事だ、好きでやってんだから気にするなよそんな事」
あまりにもあっけらかんと、真顔で言われた紫穂は、少しその式鬼神遣いと名乗った少女に恐怖を覚えた。
紫穂「し...死ぬのが怖くないんですか...?」
波切「怖いよ」
紫穂「...怖いのにやってるんですか?」
波切「...じゃあ」
突然波切が立ち止まり、くるりとこちらを向く。
紫穂「...?」
波切「君のお姉さんは化物に引き裂かれるの、怖くなかったって思うの?」
思わず固まった。
泣き叫び血で塗れた姉が脳裏に焼き付いて離れないのに。なんて無神経な、と瞬時に頭に血が登った。
波切は話を続ける。
波切「そういう人達を、化物の存在すら知らない人達が救えるの?」
無表情のままこちらを見据えた波切は、冷たく紫穂を見ていた。
波切「......人間ってさぁ」
紫穂「?」
波切「誰かがやってくれるだろうって、他の奴がいるって思ってるうちは誰もやんないんだよ」
紫穂「......」
波切「追い詰められて誰もいないからって、自分がやるしか無いからやるのさ」
波切の黒髪が闇に溶けるように見える。
この人が、怖い。そう感じた。
波切「それだけだよ。ほら、ついたよ」
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