短編 怪(あやし)は人の傍らに 2話

3/7

0人が本棚に入れています
本棚に追加
/11ページ
紫穂「......そう...ですよね...」 波切「そういう仕事だ、好きでやってんだから気にするなよそんな事」 あまりにもあっけらかんと、真顔で言われた紫穂は、少しその式鬼神遣いと名乗った少女に恐怖を覚えた。 紫穂「し...死ぬのが怖くないんですか...?」 波切「怖いよ」 紫穂「...怖いのにやってるんですか?」 波切「...じゃあ」 突然波切が立ち止まり、くるりとこちらを向く。 紫穂「...?」 波切「君のお姉さんは化物に引き裂かれるの、怖くなかったって思うの?」 思わず固まった。 泣き叫び血で塗れた姉が脳裏に焼き付いて離れないのに。なんて無神経な、と瞬時に頭に血が登った。 波切は話を続ける。 波切「そういう人達を、化物の存在すら知らない人達が救えるの?」 無表情のままこちらを見据えた波切は、冷たく紫穂を見ていた。 波切「......人間ってさぁ」 紫穂「?」 波切「誰かがやってくれるだろうって、他の奴がいるって思ってるうちは誰もやんないんだよ」 紫穂「......」 波切「追い詰められて誰もいないからって、自分がやるしか無いからやるのさ」 波切の黒髪が闇に溶けるように見える。 この人が、怖い。そう感じた。 波切「それだけだよ。ほら、ついたよ」     
/11ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加