第八章

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 これから発動させる魔法は、単体相手に発動させた経験は何度もあったが、これだけの威力は1度も使ったことがない。どれだけの魔力消費の反動がくるのかも予想できなかったが、これだけの不死者に対抗するにはこの魔法しかなった。 「もうすぐよ!」  気が付けば、広場の周囲に小さな光の粒子が浮遊していた。それはまるで水の中の泡のように、しかし浮いたまま何かをするだけでなく、何かの合図を待つように漂っている。 「この光………まさかこいつら!?」  広場一帯に急速に現れた光の粒子を見たビフロンスが、フォースィの魔法の正体に気付く。 「もう、遅いわ!」  フォースィが魔導杖を背伸びするように高く掲げた。  まるで朝日の太陽を覗いたかのような眩しさ。広場が一瞬にして光に包まれると、広場は大きな光の球体に包まれた。 「消え去れ! そして大地に還りなさい!」  続いて発動する赤を伴った白い光。光は不死者達を貫くと、衣服や鎧だけを残して一斉に塵になり、地面へと落ち、そして消えていく。百体以上いた不死者は一体も残さず、また地面を染めた血の色ですら綺麗に浄化されていく。 「すげぇ………」  冒険者達は構えていた武器を降ろし、目の前に起きたことを見つめていた。気が付けば小さな傷も塞がっており、切れかけていた加護魔法も効果が補充されていた。 「ぐっ!」  フォースィは魔法を発動した最初の呼吸から息が詰まり、地面に膝をつく。口を開けているのに空気が肺に入らず、冷や汗が止まらない。さらに胸を押さえると心臓が今にも胸を突き破って出ていきそうに激しく鼓動している。 「大丈夫ですか!」  どう見ても普通ではないフォースィの姿に、僧侶の女性が彼女の肩に手を置く。そして手を置いた僧侶は、フォースィの変化に気付き、手を咄嗟に離した。 「どうした?」他の冒険者が手を離した僧侶に声をかける。 「………体が、縮んでいるような」  そんな馬鹿なと思っていたが、言われてみれば僅かに体が小さくなっていることに冒険者達が気が付く。
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