第八章

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「………私は、大丈夫よ」  ようやく呼吸ができたフォースィは、何度も深呼吸を繰り返して心臓の鼓動を静める。そしてこれまでにない反動に動揺しつつ、フォースィはゆっくりと立ち上がる。  そして魔導杖を斜めに構え、風の塊を放つ。  冒険者達が一斉に振り向くと、冒険者達を襲おうと背後に迫っていたビフロンスが空高く吹き飛ばされていた。  そして光の薄い天井にぶつかり、激しく全身を感電させる。 「うぎゃあぁぁぁぁぁ!」  空から聞こえる悪魔の叫び声。ビフロンスは全身から焦げ臭い匂いを放ちながら腐った果実のように地面に落ちた。 「4分もったわよ………ただ、消えたのはあなた達の方だけどね」  魔導杖に体を預け、フォースィは大きく息を吐いて笑ってみせる。 「こいつ………これだけの魔法を使える人間が、まだいたなんて!」  広範囲の光の結界、そして広範囲の浄化魔法を同時に放つ。結界の中では闇の魔法や闇の眷属の力は抑制され、逆に加護、回復魔法や光に関係する魔法は増幅される。どちらも最高級の神官ですら扱える人間がいるか分からないほどの大魔法である。  気が付けばムルムスの姿がない。噴水前には灰色の甲冑だけが寂しく転がっていた。 「どうやら無口な彼は不死者だったようね」  あっけない最期だったと、フォースィの口元が緩む。そして冒険者達はフォースィの前に立ち、ビフロンスに向けて武器を構える。 「畜生………俺がこんな奴らに!」  全身の半分以上を焦がしても、なお立ち上がろうとするビフロンス。悪魔故に結界の中で弱体化した彼に、最早戦う力は残されていなかった。  ビフロンスの肩に矢が突き刺さる。そしてその間に距離を詰めた3人の戦士が、ビフロンスに1撃ずつ加え、ついには首をはねられた。
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