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プラウがそう言って部屋を出ていくと、フォースィは部屋の窓から広場で立っている焦げ茶色の髪の騎士に目を向けた。
「確かに」
そこには心なしか疲労の顔を見せているデルの姿があった。彼は家から出てきたプラウから例の薬湯をもらい、部下と共に一息をいれている。
騎士達の疲労、そしてデルがここの集落に駐留しようとしたことから、本来銀龍騎士団が向かうはずだった東の集落に何かが起きたことは予想できた。さらにバルデック達が合流していることからゲンテの街が陥落したことも伝わっているだろう。フォースィは窓から離れ、手元の薬湯を全て飲み終える。
デルはどこまで知っているのだろうか。
フォースィの中で魔王軍の存在が気にかかる。今まで本の中だけの存在だった魔王軍が現実に存在している。それが過去の魔王軍とどのような関係があるのかは分からないが、情報を得るに越したことはない。
「話をする必要があるわね」
フォースィはデルと話せる機会を窺うことにした。
その夜。フォースィはプラウに頼んでデルの部屋に案内してもらうことになった。
「フォースィさん………無事だったのですね!」
彼の部屋に向かう途中、フォースィはバルデックと偶然出会う。彼はゲンテの街でのことに感謝の言葉を述べ、さらにデル達先発隊の銀龍騎士団で起きたことを簡単に説明してくれた。
デル達もまた魔王軍と名乗る蛮族達の攻撃を受け、壊滅的な被害を被ったこと。そして敗走中の所をゲンテの街を脱出してきた自分達と合流し、今に至るのだという。
やはり、とフォースィは自分の予想通りだったと心の中で頷き、バルデックに慰労の言葉をかける。そして再び歩き出し、デルの部屋の前で一旦立ち止まった。
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