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「しかし良かった。俺の妹が教会の前で倒れていた君を見つけてくれてね。あんな場所でもっと長く倒れていたら、一体どうなっていたか………」
青年は少女が倒れていた場所が、この教会の入口の傍だったと教えてくれた。
「………あ、りがとう………ございます」
少女は乾いた唇を開き、かすれた声で青年に感謝の言葉を伝える。その言葉を聞いた青年は、何度も頷きながら少女の黒髪を撫でて喜んだ。
少女は体を動かそうと両手に力を込めるが、思うように体を動かせずに上半身だけが震えるだけだった。
「駄目駄目。どこであれだけの怪我をしたのか分からないけど、しばらく安静にしていなさい」
青年は無理をしないようにと、必死に動こうとした少女の両肩に手を置いてベッドに落ち着かせる。そして子どもを寝かしつけるように、青年は少女の上に薄い毛布を掛けた。
本当の年齢を言ったらこの青年はどんな反応を見せるだろうか。少女は一瞬そう考えたが、体が治るまでは年相応の仕草をしようと、照れながら青年の言葉に頷いて見せた。
「そうそう偉いぞ、ちゃんと寝ていような………そういえば、自分の名前は言えるかい?」
―――フォースィ。
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