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数時間後。
2人は魔女の森を貫く1本の馬車道に姿を現した。轍の残った土で舗装されている道は互いに馬車が行き来できるほどに幅広く、左右の森をしっかりと分けている。
フォースィは左右の道にそれぞれ顔を向けると、一方は高い山がうっすらと見え、もう一方には何も見えずに道が続いていた。
「こっちね」
何も見えない方の道を指さす。
「お師匠様、水はいかがですか?」
イリーナが荷物の中から牛の胃袋で作られた水筒を取り出してフォースィに見せる。フォースィはそれを受け取ると僅かに口に含み、残りを自分が飲むようにと声をかけた。
「イリーナ、飲み終わったら腕輪を外しておきなさい」
犯罪者と間違われても面倒だと、フォースィは自分の右腕に付けられている魔法封じの腕輪を2つに割るように外し、イリーナが背負う荷物の中に入れる。イリーナも飲み終わった水筒を持ちながら左手の腕輪を器用に外すと、フォースィが伸ばしてきた手に渡し、荷物の中に入れてもらう。
「………お師匠様、あれ」
不意にイリーナが向かうべき道の先を指さした。彼女の指の先では小さな影が地面を揺らす音と共に大きくなっていくのが見える。数は1つではなく、2つ、3つと増えていった。
馬に乗った全身鎧の騎士達が近づいてくる。
フォースィは道の端に寄って道を譲ろうとすると、先頭の騎士は手を上げて馬の速度を落とし始めた。
「イリーナ、あなたは何も喋らなくていいわ」
フォースィの指示に、イリーナは両手で自分の口をふさぐ。
先頭の騎士がフォースィーの目の前で止まった。馬が僅かに口を震わせて鳴き、馬上の騎士が尋ねてくる。
「我々はアリアスの街に駐留する王国騎士団です。失礼ですが、どちらへ向かわれるつもりですか?」
「アリアスの街へ行く予定ですが………何かあったのかしら?」
自分達は各地を巡礼している神官だと説明するフォースィに、騎士は『お勤めご苦労様です』と答えながら事情を簡単に説明する。
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