第四章

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『アルトの森と湖』  王都の中心、東西南北の大通りが交わる一角にその店はある。  石と赤レンガで組まれた1階は開けた酒場に隣の冒険者ギルドと部屋が続いている。さらに木造の2階、3階は良心的な値段の宿屋を経営しているという巨大な建物である。  フォースィが扉のないギルド側の入口から中に入る。  王都の冒険者ギルド。  その中は多くの冒険者で賑わいを見せていた。壁の掲示板を眺めて、今日の稼ぎを考えているがたいの良い戦士。これから初めて仕事に行くのか、若い男女の冒険者達が机の上で荷物の点検を行っている。 「お師匠様! 街の近くに盗賊が出ているって依頼が………え、金貨2枚?」 「イリーナ、とりあえずその辺にいなさい」  フォースィは掲示板を見つめているイリーナを置いていき、そのまま木目の床を進んで受付をしているエプロン姿の女性に声をかける。 「オーナーはいるかしら?」  仕事の依頼ではなく、オーナーの名前を出された女性は一瞬戸惑ったが、今は酒場の方で仕込みをしていると奥の酒場を指さした。 「ありがとう、助かったわ」  フォースィは女性に短く言葉を残すと、そのまま酒場を目指す。  まだ日が出ている時間だというのに、酒場は午前の仕事を終えた冒険者や、早めに王都に入れた商人などて賑わっていた。  近寄って来たウェイトレスにフォースィは銅貨を3枚ほど渡し、カウンター近くのテーブルを2席用意してもらう。そして案内されたカウンター隅の席に座ると、厨房の中から褐色肌の大男がカウンター越しに姿を現した。  顎髭のオーナー、その人である。彼は袖のない服の上から緑色のエプロンをつけ、顔なじみの冒険者達にそれぞれ声をかけ、1杯の酒を奢っている。 「おっと、そこにいるのは赤き神官様じゃないか」  オーナーはフォースィの姿に気付き、カウンターの中でミルクとハチミツを混ぜたグラスを彼女の前に差し出す。 「どうした、ついに冒険者家業に復帰か?」 「まさか。今は子守で手一杯よ」  フォースィはグラスのミルクを口に含むと、適当に2人分の食事を注文する。
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