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1時間も歩くことなく、2人はアリアスの街に到着した。
空もほとんど見えない魔女の森での探索のせいで、2人には時間的な感覚が少しずれていたが、徐々に西の空が赤くなり始めていることで感覚を修正する。
フォースィは簡素な西の門で見張りをしていた衛兵に街に入る許可を取り付けると、門に入って東と南門からの道と交わる広場で一旦足を止める。
広場では露天商や屋台を出していた商人が店を閉めるために荷物を片づけ、住民達は暗くなる前に夕飯などの買い物を済ませようと、せわしなく動いている姿が見て取れた。
アリアスの街は各門が等間隔で十字に交わっておらず、西と東の門が南門にかなり近くに設置されている。そして中央の大通りの坂を上がりながら宿場や食事、商店が左右に並び、中央の丘に学校が、そして平坦になった大通りをさらに進むと北門が見えてくる。
二百年前までは小さな村だったが、王国の人口が増えていく中で少しずつ大きくなっていった。今でも南の山脈越えを行う者にとっては最後の、山を下りてきた者にとっては憩いの宿場町となっている。
「さて、まずは今日の宿を探しましょう」
鞄から古書を取り出し、フォースィはこの街について書かれているページを開く。だが、魔王が泊まっていたとされる宿の名前までは書かれておらず、南の国から移住してきた褐色の肌をもつ人間が営んでいた宿としか書かれていない。
「どうしますかお師匠様。とりあえず1つ1つ宿に入ってみますか?」
空の赤みが全体の半分を占め始めた。空気も少しずつ冷たくなり、人の数も減ってきている。
「いえ、今日はここの教会に泊まりましょう」
フォースィーは本をたたむと即決した。
だが、イリーナは宿ではなく教会に寝泊まりすることが決まるや、僅かに口を曲げる。
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