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「おや、旅の神官殿と………その鎧は、聖教騎士団の方ですか」
中の掃除と長椅子の整頓をしていた長身の神父が2人の姿に気付いた。
フォースィは自分の左肩、右肩へと指を這わせると手を胸の上に乗せて小さく祈る。
「お忙しいところ申し訳ありません。私達は巡礼の旅をしているフォースィと申します。こちらは聖教騎士団のイリーナです。よろしければこちらで一晩泊めていただけないでしょうか」
紹介されたイリーナも慣れた手つきで小さく祈りを見せる。
聖書を胸に抱えた神父は、しわの多い顔でゆっくりと微笑んだ。
「ええ、構いませんよ。それにしても赤い神官服とはまた珍しい方で………」
2人に近付きながら話していた神父の言葉が、足と共に一瞬止まる。そしてフォースィの前で視線を上から下へと動かし、何かを思い出そうと言葉を続けた。
「もしやあなたは『十極』のフォースィ殿ですか?」
フォースィが黙って小さく頷くと、神父は目を大きくして驚き、フォースィの両手を握った。
「何という………何という神の導きか。あぁ、まさかあなたのような高名な方にお会いできるとは!」
「いえ、まだ力不足でお恥ずかしい限りです」
何度も見てきた光景。フォースィは神父の硬くなった皮膚の手で握られながら、動じることなく微笑み返す。
神父は我に返ると、失礼と小さく咳払いして手を離した。
「実は救っていただきたい者がおります」
何かあるようだ。フォースィは表情をそのままに神父の言葉の意味を察する。
「イリーナ。あなたは先に部屋に案内してもらって、今晩必要な荷物を整理して出しておきなさい」
「こちらも案内を出しましょう」
神父は近くにいた高齢の修道女に声をかけ、2人が泊まれる部屋を案内するように伝えた。
イリーナが修道女に案内されて礼拝堂を出ていくと、神父はこちらにとフォースィを別の部屋へと案内する。
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