第一章

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「おや、旅の神官殿と………その鎧は、聖教騎士団の方ですか」  中の掃除と長椅子の整頓をしていた長身の神父が2人の姿に気付いた。  フォースィは自分の左肩、右肩へと指を這わせると手を胸の上に乗せて小さく祈る。 「お忙しいところ申し訳ありません。私達は巡礼の旅をしているフォースィと申します。こちらは聖教騎士団のイリーナです。よろしければこちらで一晩泊めていただけないでしょうか」  紹介されたイリーナも慣れた手つきで小さく祈りを見せる。  聖書を胸に抱えた神父は、しわの多い顔でゆっくりと微笑んだ。 「ええ、構いませんよ。それにしても赤い神官服とはまた珍しい方で………」  2人に近付きながら話していた神父の言葉が、足と共に一瞬止まる。そしてフォースィの前で視線を上から下へと動かし、何かを思い出そうと言葉を続けた。 「もしやあなたは『十極』のフォースィ殿ですか?」  フォースィが黙って小さく頷くと、神父は目を大きくして驚き、フォースィの両手を握った。 「何という………何という神の導きか。あぁ、まさかあなたのような高名な方にお会いできるとは!」 「いえ、まだ力不足でお恥ずかしい限りです」  何度も見てきた光景。フォースィは神父の硬くなった皮膚の手で握られながら、動じることなく微笑み返す。  神父は我に返ると、失礼と小さく咳払いして手を離した。 「実は救っていただきたい者がおります」  何かあるようだ。フォースィは表情をそのままに神父の言葉の意味を察する。 「イリーナ。あなたは先に部屋に案内してもらって、今晩必要な荷物を整理して出しておきなさい」 「こちらも案内を出しましょう」  神父は近くにいた高齢の修道女に声をかけ、2人が泊まれる部屋を案内するように伝えた。  イリーナが修道女に案内されて礼拝堂を出ていくと、神父はこちらにとフォースィを別の部屋へと案内する。
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