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第二章
黒髪の少女は薄汚れた布をまとい、王都のスラム街を行く宛もなく、小さな足の裏を汚しながら体を左右に揺らして進んでいた。
特に目的地があるわけではない。
少女にはもはや十分に考えるだけの余力がなかった。
王都の地下で発見された魔剣。これを調査すべく、名のある冒険者や騎士達と共に挑んだものの、生き残ったのは女性の神官が1人だけ。
その神官も魔力を膨大に使い果たし、今のような幼い姿になっていた。
魔力を使った者が皆こうなるわけではない。彼女がもつ異常な体質故の結果である。彼女は魔力を一定量使う度に体が若返っていくのであった。
進んでいた道がついに行き止まり、少女は壁に背をつけて座り込む。少女の口から出る呼吸は次第に荒くなり、小さな目も虚ろに霞んできた。
「一気に力を使った反動ね………。体と魔力の調整が追いついていないんだわ」
何とか冷静に視線を運ぼうとするが、既に周囲の音すら細切れにしか伝えてくれない。
こんな場所で目を瞑ってしまったらと少女は考えながら、ついには視界が暗くなっていった。
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