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第四章
王都ウィンフォス。国と同じ名前を持つこの街は、巨大な白い城壁に囲まれ、中はアリアスの街の大通りよりも倍の幅はある石畳の道を大勢の人間が行き交っていた。
「お師匠様! 大きい門でしたね!」
「王都名物、西の大正門ね。いつ見ても無駄に大きいのよ」
街に入るために並ばされること30分。手続きを終えることたったの2分。ようやく大正門を見上げながら通り過ぎることができた。
もしこれで馬車を持っていたら馬停料を取られ、さらに荷下ろしをする手間も待っていた。
フォースィは王都直前の街に立ち寄り、馬車を馬ごと売り払っておいた。積み荷は必要な物だけイリーナの大きなリュックに詰め込み、残りは昨夜の内に焚火の薪代わりに燃やしてある。
詳細を聞かない代わりに売り払ったために大分商人に安く買い叩かれたが、それでも王都行きの運賃としては十分に余りが出た。
フォースィ達はそのお金で王都行きの馬車に乗り、そして直前で降ろしてもらい、今に至る。
門を抜けた先の広場では、待っていた騎士達によって馬車で来た商人達が専用の馬留場所に誘導されていく。また、商人や旅人達は地図を頼りに道を探す者、既に来慣れている者は目当ての宿場を探して東西を結ぶ大通りを進んでいった。
「お師匠様、これからどうしますか?」
イリーナは人混みに巻き込まれないようにフォースィの赤い裾を掴んでいる。
王国に来た目的はこの街の名店の1つ『アルトの森と宿』に寄り、二百年前の情報について聞き取りを行うこと。フォースィは迷わず店に立ち寄ることを決めた
「予定通り、例の宿に行くわ。もしまだ部屋が空いているのならば、今日はそこに泊まりましょう」
「やったー!」
イリーナが両手を上げて喜ぶ。
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