一ノ章

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現場は、井の頭公園より東側の住宅街にある庭付きの戸建てだった。 敷地は広く、豪邸と言っていい部類の邸宅で、かなりの資産家だとわかる。 石垣の上に白いコンクリート造りの塀が続いていて、一段高くなって階段で上がる入り口は鉄製の門扉だった。 もちろん、カメラ付きのインターホンに、警備会社のステッカーが貼られているし、実際何かあった時、駆け付けた警備員へ知らせる黄色の表示灯も付いている。 「お疲れさま」 門扉の前に立っていた警官に声を掛け軽く手を挙げた。 「お疲れさまです」 彼はそう言って生真面目そうな顔で敬礼をした。 俺はそれに軽く応えて中に入った。 中は家の周りと玄関までの小径、そして庭の所々のライトで照らされた所だけぼんやりと明るく、一部強い光がゆっくりと左右に動いていた。 その強い光は鑑識課員が遺留物を探しているライトだった。 そのまま玄関までの小径を行こうとすると、係長の岡野が出てきた。 細身の体で知的な風貌なのに飄々としている。 たまに相手に気付かれない程度に目付きが鋭い。 「おお、来たか」 「遅くなってすみません」 「いいさ。まだ鑑識が作業中だ」 係長は軽く手を振った。 「で、ガイシャは?」     
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