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現場は、井の頭公園より東側の住宅街にある庭付きの戸建てだった。
敷地は広く、豪邸と言っていい部類の邸宅で、かなりの資産家だとわかる。
石垣の上に白いコンクリート造りの塀が続いていて、一段高くなって階段で上がる入り口は鉄製の門扉だった。
もちろん、カメラ付きのインターホンに、警備会社のステッカーが貼られているし、実際何かあった時、駆け付けた警備員へ知らせる黄色の表示灯も付いている。
「お疲れさま」
門扉の前に立っていた警官に声を掛け軽く手を挙げた。
「お疲れさまです」
彼はそう言って生真面目そうな顔で敬礼をした。
俺はそれに軽く応えて中に入った。
中は家の周りと玄関までの小径、そして庭の所々のライトで照らされた所だけぼんやりと明るく、一部強い光がゆっくりと左右に動いていた。
その強い光は鑑識課員が遺留物を探しているライトだった。
そのまま玄関までの小径を行こうとすると、係長の岡野が出てきた。
細身の体で知的な風貌なのに飄々としている。
たまに相手に気付かれない程度に目付きが鋭い。
「おお、来たか」
「遅くなってすみません」
「いいさ。まだ鑑識が作業中だ」
係長は軽く手を振った。
「で、ガイシャは?」
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