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「事件解決したの?」
久しぶりに家に帰ると、玄関で美冬さんが聞いてきた。
「ああ」
俺は力なく微笑んだ。
「お疲れさまでした」
美冬さんが両手を前に揃えて頭を下げた。
「……ありがとう」
そして、顔を上げた彼女の笑顔に、俺は救われたのだった。
彼女にしてみれば、いつ帰ってくるか、いや、帰ってくるかどうかもわからない婚約者を待ち続けている。
俺とここで暮らし始めてからでも、もう5年。
それでも、彼女はこうして笑ってくれる。
彼女の心の中にある婚約者の存在は、俺には太刀打ちできるものではなくて、その笑顔は単なる優しさだけのものだとはわかっている。
でも、もし美冬さんがここにいなかったら、俺はこうしていられたのだろうか……
そう思う度に、今が結局幸せなんだと、実感するのだった。
俺は、分かっていて、彼女と暮らすことを選んでしまったのだ。
またすぐ次の事件が来る。
今はゆっくり眠ろう。
ニノ章 護る 終
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