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「ごめん、お金貸して」
あべのは悪びれる風ではないが、目の前でパンッと手を合わせて頭を下げた。
「あら、あべのちゃん、そういうことだったの?」
美冬さんが気が付かなかった風であべのを見た。
「だって、美冬さんには頼めないよ」
「まあ、そうだよね……私働いてないしね……」
美冬さんが少しシュンとした。
「あ、そういことじゃなくて!ぜんぜん気にしないで!そのためのお兄ちゃんだから!」
「おい」
なんだ、そのフォローは……
それよりも、こんなことで美冬さんを困らせないで欲しい。
「なんだ、また公演のノルマか?」
「えへへへ」
売れない劇団員あべのが舌を横に出してウインク。
お菓子系のマスコットで見た様な顔だ。
一見黒髪で和風な雰囲気なのに、こんな表情をする妹は魅力的なんだろうとは思うが、どうやらまだ彼氏はいない。
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