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「黒川さん」
「ん?」
「いろいろと、ありがとうございました」
彼女はそう言って村下哲也を抱き締めたまま、頭を下げた。
「いや、俺は別に……」
彼女はゆっくりと頭を振った。
そして、また頭を下げると、
「哲也、ごめん。……もう時間」
「え?」
「さようなら……」
その瞬間、彼女は淡く消えていった。
「えりか……」
彼にもそれが分かったらしい。
「えりか……」
そう呟いて、床に手をついた。
後は泣き続けた彼を、俺は見守るしかできなかった。
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