2 君が居た部屋

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 赤:ドッシリとしていて厚みがあり、スパイシー。タンニンが多いもの。例)シラー、グルナッシュ、メルロー。銘柄なら、コートデュローヌ、シャトーヌフドパブ、ラングドックルーション、クローズドエルミタージュ、モンテプルチアーノダブルッツォ。  チリ、アルゼンチンなどのニューワールドもの』 「・・・・・・」  秋川はメモを本の中へと戻し、その本を本棚へと仕舞って、瀬田の部屋を出た。  メモに記されていたのはものの見事に、秋川のワインの好みだった。 秋川本人には瀬田に、これらの事柄を滔々(とうとう)と語った記憶はない。例え、自分が忘れているだけだとしても、瀬田がそれらを書き留める意味は全くないように、秋川には思われた。  どうして、そこまで?と秋川は正直、思わずにはいられなかった。 まるで、他人事の様に。  七年も前に会った切りの、しかも自分のことを(薄情にも)キレイさっぱり忘れてしまっていた男のことをどうしてそこまで、瀬田は想うのだろうか?  秋川が自分に抱いているセルフイメージはズバリ、並だった。 可もなく不可もなく、瀬田の様なイケメンではないが、もの凄い個性的な顔、つまりブサイクでもない。  眼鏡がないと何となくぼやけた、特徴のない地味な顔だ。と我ながら思うが、まぁ、平均的な方だろう。と秋川は納得している。  他人に取り立てて生理的嫌悪感を抱かれたこともなく、又、条件なしに好きになられたこともなかった。  なかった。と秋川はそう、思い込んでいた。
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