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秋川がグラスを両手に居間へと行くと、瀬田は会社から帰って来た時の格好、ブルーグレーのボタンダウンシャツに、ダークブルーのスラックス姿のままでソファーへと座っていた。
「あれ?着替えてこないのか?」
「せっかくのいいワインですから、ちゃんとした格好で頂きます」
四角張って言う瀬田に、秋川はつい、笑いを誘われてしまった。
「余りハードルを上げるなよ。冬のボーナスの時は、おまえが何か買って来いよ?」
「先輩の好みは難しいからなぁ・・・」
言葉ほど満更でもない様子の瀬田にワインを注いだグラスを手渡し、秋川は乾杯。と自分のを掲げ、一口だけ飲んだ。
力強い味わいながら飲み易い。アルコールですら喉に滑らかに感じられる。
「・・・バローロって確か、イタリアワインの王様ですよね?ピエモンテ州でしたっけ?」
「そう、長靴の上の辺り。アルプス山脈がある北の方だ。詳しいな」
「先輩のおかげですよ。色々と飲ませてくれるから」
控えめに笑ってそう言い、瀬田はグラスを傾けた。
イケメンというのは、喉仏まで形がいいのだな。とワインを飲み込み上下する瀬田の喉の突起を見て、秋川は思う。
それにしても絵になる。まるで、映画かドラマのワンシーンの様だった。
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