3 フルボトルをめぐる攻防

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 此処が、男二人でルームシェアをする殺風景な居間などではなく、高級フレンチかイタリアンレストランだったのならば、瀬田と同じテーブルの真向かいに座る女性はもれなく、恋に落ちることだろう。  この上、瀬田がワインの知識まで身に付けたのならば、向かうところ男の敵無しだった。  秋川はサラミのスライスをつまんだ。ドンピシャだった。脂を洗い流す為に又、ワインを口にすると飲むのが止まらなくなりそうだった。  「瀬田、おまえがワインを飲めてよかったよ」 「え・・・?」   秋川は酒が好きだったが哀しい哉、余り強くはないことを自覚している。ビールも日本酒も飲めることは飲めるのだが、何と言っても一番好きなのはワインだった。  瀬田と一緒に暮らす前までの秋川は、ワインバーなどで気になる銘柄を一、二杯ずつ味見がてらに飲んでいたのだが、瀬田が下戸ではないのを幸いに、最近では(もっぱ)ら外では主にミクリヤで、内ではこの部屋で買い求めたフルボトルを付き合わせていた。 「フルボトルのワインは二人で飲むのにはちょうどいい量だ。って、昔読んだ小説にそんな言葉が出てくるんだ。本当にその通りだって思うよ」 「・・・・・・」  瀬田は黙って空になったグラスへと視線を落としていた。 もう酔ってしまったのだろうか?と秋川は一瞬思ったが、真顔だと人形じみて見える整った顔には、少しもアルコールの影は差してはいなかった。     
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