3 フルボトルをめぐる攻防

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 「どうして、そう断言できるんだ?先のことなど判らないだろう?」 「判りますよ。自分のことですから。佐伯さんがおれに一目惚れしたというなら、その逆です」 「・・・なるほどな。けして好きにはならないことが一目で判ったという訳か」  秋川は黙って大きくうなずいた。 こればかりは、どうしようも(佐伯風に言うのならば致し方)ない。 変に佐伯に期待を持たせても、佐伯本人にはもちろんのこと、自分にも後々の為にはならない。  痴情(しかも男同士)のもつれで、仕事に支障が出るのは何としても避けたい秋川だった。  「一目嫌われ、か・・・」 ため息を吐き、切なげにつぶやく佐伯の様は気障も気障だが、こういう芝居だと思えば見れなくもない。と秋川は必死に自分に言い聞かせた。 「残念だ。返す返すも残念だ。今夜こうして君と話してみて益々、君のことが好きになったというのに・・・きっと君の心は覆りはしないだろう。君の心は君だけのものなのだから。そして、私の心も又、私だけのものだ。君を想う気持ちは他ならぬ君にも止められやしない」 「・・・・・・」    
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