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勝手にしてください。と突き放せる程に秋川は非情ではなく、しかし、そこまで想ってくれるのならば。と絆される程にバカではなかった。
ただただ、佐伯劇場のオンステージの幕が下りてくれるのをじいっと待つしかなかった。
秋川は目の前に置かれていた白ワインを一息で飲み干す。少し温くはなっていたが、すっきりとした酸味が美味しかった。
此処はいいバーなのかも知れない。こんなことでは来たくはなかった。と秋川は思った。
「話が終わったんでしたら、帰らせてもらいます」
「今夜は来てくれてありがとう。ここは私に払わせてくれ」
「これで最後だったら、ご馳走になります」
「・・・わかった。君は物堅いな」
秋川は一礼をし、先に席を立った。
バーに居たのはものの三十分程だったのに、酷く疲れた。
このまま真っ直ぐと、自分の部屋へと帰るのは秋川は嫌だった。何故かは判らないが、今直ぐに瀬田と顔を合わせたくはなかった。
瀬田は未だ帰って来ていないかも知れないし、ましてや瀬田には何の関係もないことだというのに・・・・・・
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