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4 雨、上がる
その夜から、瀬田の姿は秋川の前から消えた。
瀬田とて子供ではない。ちゃんと会社には行っているようだった。
どうやら何処かで寝泊まりをし、所属しているデザイン部が完全フレックス制なのをいいこと?に、秋川と入れ違いに部屋へと出入りをしているらしい。
その証拠に一度ならず二度までも、秋川の分まで洗濯がされていたことがあったし、自分が食べたかったからだろうか、秋川が帰宅をすると鍋一杯のラタトゥイユ(秋川の好物)が作られていたことがあった。
これではまるで、円満な家庭内別居だ。とズッキーニとナスとがたっぷりと入ったラタトゥイユをその日の夕食として噛みしめながら、秋川は考えた。
このままでは、このままにしておいてはいけない。けして、いけない。と繰り返し思いつつも、何も出来なかった一週間だった。
せっかくの週末だと言うのに、心はまるで浮き立たなかった。
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