4 雨、上がる

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 一際大きな稲光が窓の外に走り、三拍程遅れて低く鈍い音が轟いた。途端に室内の照明が消えた。  ブレーカーが落ちてしまったらしい。確か、玄関のドアの上に在ったはずだと、復旧をするべく玄関へと向かった秋川はそこで、立ち尽くす瀬田の姿を見つけた。 一目で、夕立に当たったのが判る程に全身がずぶ濡れだった。 「近くまで来たら、雨に降られて。先輩は居るだろうとは思ったけど着替えたくて、それで・・・」 「瀬田っっ!」  思わず、秋川は瀬田へと抱きついていた。 今ここで、瀬田を再びこの玄関から一歩でも、外へと出してしまったのならば、もう二度と会えない様な気がしてならなかった。 「・・・先輩、濡れますよ。離してください」 右耳のすぐ横で聞こえる瀬田の声は、酷く冷たく秋川には聞こえた。 初めて聞く声だった。 「嫌だ。絶対に嫌だ。離したらおまえは又、出て行くに決まってる。だから嫌だ」 「着替えたいんです。離してください」  繰り返し言う瀬田の凍えた声とは裏腹に、秋川は怒りで体が熱くなるのを感じた。 「瀬田、おまえ、今まで一体何処に・・・」 「離せって言ってんだろう!!聞こえないのかよ!」 泊まっていたんだ?と問い掛けた秋川は、それこそ雷に打たれたかの様に一瞬その体を震わせ、ようやく瀬田から離れた。  うつむく秋川がの頭上に瀬田の声が、言葉が降り注ぐ。 「すみません。怒鳴ったりして」 何時もの、秋川が聞き慣れている柔らかな瀬田の声だった。 「いや、俺の方こそすまない」     
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