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瀬田にとっては今日、秋川と鉢合わせをするのは想定外かつ不本意だったのだろうが、秋川にはまたとないチャンスだった。
雷雨は未だに降り続いていて、秋川はゲリラ豪雨にしてはしつこいこの雨にすら、感謝したい気持ちだった。
バスルームから出て来た瀬田は、夏の部屋着であるTシャツとハーフパンツとに着替えていた。
居間のテーブルの何時もの席、キッチン寄りの、秋川の向かいへと腰を下ろす。
「何か飲むか?麦茶とビールとなら冷えてるけど」
「今はいいです。先輩だけでどうぞ」
瀬田へとは勧めたが、自分一人では麦茶もビールも飲みたくなかった秋川は、そのまま瀬田を見つめた。
改めて見るとやっぱりカッコよかった。
着ているものがいかにもファストファッション!だったとしても、まるでその、ファストファッションのメーカーの広告から抜け出してきたモデルの様だった。
同じ部署の女性社員に、瀬田と同居していると知られた時の大騒ぎ振りといったら!
将を射んとする者はまず馬を射よ。があからさま過ぎて、笑うことしかできなかったのを秋川は思い出す。
瀬田は俯き加減で、秋川と目を合わさないままでゆっくりと口を開いた。
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