4 雨、上がる

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 「おれ、此処を出て行きます。勝手で悪いんですけれども、他にルームシェアする人を見つけてください」 「どうして・・・?」  思わずつぶやいた、つぶやいてしまった秋川へと、瀬田は呆れた様に言い放った。 さすがに顔を上げる。 「どうして・・・って、先輩も男なら判るでしょう?好きな人と同じ部屋で暮らしていて、平気でいられる訳ないじゃないですか!どの道、もう限界だったんです。佐伯さんのことがなくても、遅かれ早かれこうなっていたと思います」 「じゃあ、瀬田、何でおれとルームシェアをしたんだ?その、ずっと好きだったんだろう?おれのこと」  秋川としては本気で解らないので、瀬田へとたずねたのだが、 「決まってるじゃないですか!そばにいたいからですよ!好きな人の近くに居て、何時も見ていたいって思うの、そんなの当たり前じゃないですか!さんざん言ったでしょう?先輩のことが好きだって!未だ解らないんですか?もしかして、わざと言わせてるんですか?」 と、本気で怒らせてしまった。 「わざとじゃないんだ。す、すまない。悪かった」  矛盾している。と秋川は思ったが、黙っていた。 数字の様にきっちりと示すことが出来ないのが心なのだろう。ましてや恋心となるとコントロールが効かなくなるのは、この瀬田のうろたえっぷりが教えてくれる。     
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